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2026年00月00日更新

KOKUGAKUJIN #21

だれもが、そこにいていいと思える場所をつくる。

Q 子どもの頃は、どんなお子さんでしたか?

 私は静岡県島田市の出身です。家の近くには大井川が流れ、田畑が広がる緑豊かな自然環境の中で育ちました。祖父が剣道の道場を開いていたこともあり、小学校1年生から中学、高校までは剣道中心の生活。道場にほぼ毎日通い、手が上がらなくなるまで打ち込みを繰り返すような日々でした。祖父は普段は優しい人でしたが、筋が通らないことには厳しく、稽古に向き合う姿勢についても一切の妥協を許しませんでした。稽古を怠ると、指導を受けることもありました。当時は厳しいと感じることもありましたが、そうした経験のおかげで、「逃げずに物事と向き合う姿勢」が身につきました。
 中学校では部活動でも剣道部に入部し、学校と祖父の道場での稽古を両立させながら剣道に打ち込みました。高校でも剣道部に所属して、厳しい稽古に明け暮れました。途中で辞めたいと思った時もありましたが、中学校最後の地区大会で負けた悔しさや、ライバルに勝ちたいという思いで剣道を続けました。それに、稽古が厳しいと感じる中でも、心の奥底では「剣道が好き」だったのもあります。意地と探究心が、モチベーションの支えでした。
 振り返ると、私の「人としての基軸」は、逃げ出さずに剣道に打ち込んだ経験によって育まれたのかもしれません。

Q どんな夢を持っていたのでしょう?

 具体的ではありませんでしたが、子どもの頃から将来は「人の役に立ちたい」とずっと思っていました。祖父は、ボランティアに近い形で小学生と中学生に剣道を教えており、子どもたちからとても慕われていました。また、民生委員として地域を支える活動にも携わっていました。
 いつも人のために在ろうとする祖父の背中を見て育ったことで、自然と公共奉仕への思いが芽生えたのだと思います。同時に、いつかは尊敬する祖父を超えたいという気持ちもありました。大学へ進学する際には、人々を支える立場で社会に関わりたいと考え、行政の仕事に従事することを目指して法律や政治を学べる國學院大學法学部法律学科への入学を決めました。

Q 在学時は、どんな学生生活を送りましたか?

 学生時代は、公務員になるための勉強に一番力を入れました。2年次からは公務員試験対策の予備校にも通い、法学部の授業と並行して試験対策に取り組みました。
 法学部の授業で特に印象に残っているのは「刑法」です。裁判所へも傍聴に行き、刑事事件の裁判を傍聴する中で、人の心の表と裏を目の当たりにする場面もありました。また、環境保護に関わる法律を学ぶ「環境法」にも心を引かれました。子どもの頃から自然に親しんで育ったこともあり、豊かな自然環境を次の世代に残すために法律でどのように守るかを考える授業内容は、とても興味深かったです。

Q 今のお仕事を教えてください。

 大学を卒業してから、小金井市の職員として働いています。入所当初は市民課で、市民の方々と接する窓口業務を担当しました。その後、庁舎や市の財産管理、道路や公園の都市計画事業などを経験し、現在は環境政策課で主に公園の管理運営に関わる仕事をしています。
 3年前からは「小金井みんなの公園プロジェクト play here」を立ち上げ、さまざまな人が自由に、安心して過ごせる公園づくりを進めています。このプロジェクトを提案したきっかけは、障害がある人に対する周囲の特別な視線や理解のない対応をなくしたいという強い思いからでした。私の妹は知的障害があり、公園で一緒に遊んでいると、妹に対する、特別な視線をむける人の存在があることをたびたび目にしていました。当人は意識していないのでしょうが、公園が「誰もが憩える場所」でない居心地の悪さを感じていました。
 そうした原体験から、公園に関わる仕事をする機会があれば、どのような個性や背景の人も「誰もが自由に過ごせる公園をつくりたい」と考えていました。また、自分に子どもが生まれたことで公園に行く機会が増え、「公園は子どもにとっても、親にとっても気持ちを解放できる場所なんだ」と、これまであまり認識していなかった役割を感じるようにもなっていました。

 プロジェクトの推進には、環境政策課だけでなく、福祉、子育て、産業振興、国際交流、教育などの部署との連携とともに、市民の協力が欠かせません。この3年間、市民の方々の理解を得るために対話を重ね、多くの人たちと向き合いながら意見交換を行ってきました。市内の公園では、さまざまな背景のある子どもたちが一緒にごちゃまぜになって遊ぶイベントも開催しています。その結果、プロジェクトの趣旨が地域に少しずつ認知され、協力してくださる方が増えてきました。現在は、市内3つの公園で、さまざまな理由で公園に行くことができなかった子どもが遊べるように、遊具の設置や車椅子の動線確保などの環境整備とともに、さまざまな障害や特性に対する理解を深める取り組みも進めています。
 障害のある子どもを持つお母さんから「以前は気持ちが沈みがちだったのですが、プロジェクトに参加して、いろいろな人たちと関わり、お話しすることで、明るく前向きになれました」という声をいただいた時は、諦めずに続けてきて本当に良かったと思いました。

(栗山公園 特別遊具)

Q これからチャレンジしてみたいことはありますか?

 公園を整備して終わりにするのではなく、さまざまな立場の方への理解を深める取り組みをこれからも続けていきたいと考えています。公園に限らず、まちのあらゆる場所に、誰もが気軽に足を運べる環境にしていくこと。立場に左右されることなく安心して暮らせる街、あらゆる人を隔てなく受け入れるインクルーシブな地域社会をつくることが、今の私の目標です。いつかインクルーシブである状態が当たり前になり、その概念自体を無くせればとも考えています。

Q 小林さんが個人として大切にしている信条は?

 「逃げずに物事と向き合う姿勢」につながることですが、「失敗を恐れずに挑戦すること」です。失敗を学びとして受けとめ、立ち止まることなくチャレンジを続けることを心がけています。

Q 小林さんが考える國學院らしさ(KOKUGAKUJIN)とは?

 國學院大學の学生は、まじめにコツコツと物事に取り組む人が多いという印象があります。私も学生時代は公務員を目指して努力を続けていました。他人のために行動することを厭わない人が多いことも、國學院らしさだと思います。この点も子どもの頃から抱いていた「人の役に立ちたい」という私自身の気持ちと重なると感じています。

小林 勢

國學院大學法学部法律学科
平成14年度卒業

小金井市職員

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